- 離婚に向けて保険の見直しを行いたいが、どのタイミングで行えば良いか分からない方
- 財産分与の対象となる保険の種類を知りたい方
- 加入している保険について、手続きが必要なのかを知りたい方
- 離婚前後の保険の見直しの主なタイミングは3回ある!
- 財産分与の対象となる保険の種類は「終身保険」「養老保険」「学資保険」など複数をチェック
- 民間の生命保険、公的保険それぞれでの手続きポイントを解説
宮城県出身。慶應義塾大学商学部卒。ファイナンシャル・プランニング技能士1級。
新卒で大和証券へ入社後、みずほ銀行など5社へ転職し、FPコンサルティング部部長や社長室室長などを経て独立。
金融機関の執筆記事の監修や、不動産会社でのセミナー講師、金融機関向けの動画制作など実績多数。金融初心者からは「難しいテーマでもわかりやすく理解できる」と好評。
離婚したときに民間の生命保険を見直すポイント
離婚する際に、生命保険の手続きや見直しは必須です。
離婚前後の保険見直しのタイミングは以下の3回に分けることができます。
- 離婚前
- 離婚後の各種手続き時
- 離婚後の保険見直し時
ここからは、それぞれのタイミング毎に保険見直しのポイントについて解説していきます。
保険の見直しタイミング①:離婚前
まず離婚前には「財産分与」の対象となる保険の有無を確認します。
財産分与とは、
です。
保険の中でも、解約返戻金や満期保険金がある貯蓄性のある商品が財産分与の対象となります。具体的には以下の種類の保険が対象です。
保険の種類 | 概要 |
---|---|
終身保険 | 満期がなく、保障が一生続き、死亡や高度障害になれば保険金が受け取れる保険 |
養老保険 | 満期が決まっていて、満期に受け取る保険金(満期保険金)と死亡したときに受け取る保険金(死亡保険金)が同額の保険 |
学資保険 | 子供の教育資金の準備を目的とした保険 |
個人年金保険 | 老後に必要な生活資金に対し、公的年金に上乗せして補完する目的で、自身で準備する保険 |
変額保険 | 払い込んだ保険料を、株式や債券を中心に運用し、運用の実績によって保険金や解約返戻金額が増減する保険 |
外貨建て保険 | 払い込んだ保険料を、米ドルや豪ドルといった外貨で運用する保険 |
その他の積立保険 | 一定期間保険料を積み立てることで満期時などに一定の保険金を受け取ることができる保険 |
上記の財産分与の対象となる保険に1つでも加入されている場合には、離婚後に保険を「継続するか」「解約するのか」を夫婦で相談する必要があります。
解約した保険に再度加入する場合には、改めて審査が必要になりますので、審査次第では再加入できないリスクもあります。解約については慎重に検討しましょう。
続いて見直しタイミングの2つ目「離婚後の各種手続き」です。
保険の見直しタイミング②:離婚後の各種手続き
ここからは保険の種類別に、「継続する場合」の注意点を解説していきます。
死亡保険
1. 契約者・被保険者の確認
死亡保険は、加入者である被保険者が死亡したときに、遺された家族に対して保険金が支払われる保険です。
以下の2パターンについて、ポイントを押さえておきましょう。
自分が死亡保険の継続を希望する場合には、契約者の変更(名義変更)手続きが必要です。
ただし、保険によっては、契約者の変更が認められないこともありますのでご注意ください。契約者の変更ができるかどうかは、保険会社に必ず確認しましょう。
解約返戻金があるタイプの保険の場合、夫婦別居時の解約返戻金相当額については財産分与の対象となります。
2. 受取人の確認
離婚の際、受取人を変更します。受取人は子どもや自分の親族(親や兄弟姉妹など)に変更する場合が多いです。
3. その他の変更手続き
その他の変更手続きとして
- 契約者・被保険者の改姓・改名に伴う変更
- 住所などの変更
- 保険料払い込み方法の変更
- 配偶者に関連する特約などの変更
などを行う必要があります。
子どもの生命保険
夫婦のどちらかが保険料を支払っている場合には、子どもの生命保険も夫婦の共有財産とみなされます。夫婦別居時の解約返戻金相当額が財産分与の対象です。
子どもの学資保険
「契約者=配偶者」の場合
「受取人=配偶者」の場合
配偶者のままにしておくと、連絡が取れなくなった際に保険金を受け取ることができなくなってしまう恐れがあるためです。
ここまでが離婚後の各種手続きでした。それでは見直しタイミングの最後として、離婚後の保険の見直しについて解説していきます!
保険の見直しタイミング③:離婚後の保険の見直し時
離婚後は家族構成や生活スタイルが変わって新生活が始まるため、保障内容を見直す必要があります。
母子家庭・父子家庭の場合
離婚後に子供を引き取り母子家庭や父子家庭になる方は、保障対象の見直しを検討します。子供がいる分、病気やケガなどの不測の事態により備えた保障を検討する必要があります。
離婚前は元配偶者が世帯主で、死亡保険や医療保険も元配偶者の分しか加入していなかった場合
家計のやりくりが難しい場合
下記の状況に当てはまる人は家計が不安定になるケースがあります。
- 離婚前は元配偶者が世帯主で家計を支えており、自分は専業主婦(主夫)だった人
- 現在正社員の職に就いていない人
- 正社員ではあるものの、子どもの養育費の支払いが多い人
婚姻生活が長く、家事や育児に専念してきた人の場合、就業経験が少ないことから再就職が難しく家計が不安定になる可能性があります。また正社員ではあっても、子どもの養育費の支払いが多い場合にも家計が不安定になってしまう場合があります。
ここまで、離婚した時の3つの保険見直しタイミングについてのポイントを押さえることができましたが、最後の公的保険(健康保険など)の整理も忘れてはいけません。
複雑になりがちな部分をわかりやすく整理しておりますので、一緒にみていきましょう。
離婚したときの公的保険の整理について
公的保険についても民間保険同様、離婚後にパートナーと連絡が取れなくなったり、非協力的になったりして、手続きがスムーズに進まなくなってしまう場合がありますので、離婚前から手続きについてはしっかり把握しておきましょう。
公的医療保険の手続きは、離婚前や離婚後の状況によって異なりますが、大きく以下の5つの場合について把握できていると安心でしょう。
- 夫/妻の扶養、もしくは世帯員に入っている場合
- 子供の扶養元を変更する場合
- 離婚後に就職しないで、親の扶養もしくは世帯員に入る場合
- 離婚後に就職しないで、親の扶養もしくは世帯員にも入らない場合
- 離婚後に就職する場合(就職していた場合)
順に見ていきたいと思います。
夫/妻の扶養、もしくは世帯員に入っている場合
夫/妻のどちらかの扶養に入っている、もしくは世帯員になっている場合は脱退の手続きを行う必要があります。世帯主が手続きを行う点では共通ですが、加入している健康保険の種類によって手続きの流れは異なります。
パートナーとともに「国民健康保険」に加入している場合
パートナーの「健康保険(社会保険)」の扶養家族だった場合
子供の扶養元を変更する場合
夫婦別々の公的医療保険に加入しており、子供を引き取らない側のパートナーの公的医療保険に子供が扶養されている場合には、子供の脱退手続きが必要です。手続きの流れは、子供が国民健康保険の世帯員か、健康保険(社会保険)の扶養家族かで異なります。
子供が「国民健康保険」の世帯員だった場合
子供が「健康保険(社会保険)」の扶養家族だった場合
離婚後に就職しないで、親の扶養もしくは世帯員に入る場合
離婚後にご自身の就職先が決まっていなく、一時的に親の扶養、もしくは世帯員に加えてもらう場合についてです。
この場合には、世帯主である親に公的医療保険への加入手続きを行なってもらう必要があります。こちらは親が「国民健康保険」と「健康保険(社会保険)」のどちらに加入しているかで手続きの流れが異なります。ただしどちらの場合も世帯主である親が手続きを行います。
親が「国民健康保険」に加入している場合
親が「健康保険(社会保険)」に加入している場合
離婚後に就職しないで、親の扶養もしくは世帯員にも入らない場合
この場合は、個人で国民健康保険に加入する必要があります。
離婚後に就職する場合(就職していた場合)
パートナーが「国民健康保険」と「健康保険(社会保険)」のどちらに加入していたかで手続きの流れが異なりますが、最後はご自身で手続きを行う必要があります。また、いずれの場合でも、子供を引き取る場合には、子供を扶養に入れる手続きも必要です。
パートナーが「国民健康保険」に加入していた場合
世帯主が市区町村役場の担当窓口で、「被保険者資格喪失届」を提出し、ご自身の勤め先で健康保険(社会保険)加入のための所定の手続きを行います。
パートナーが「健康保険(社会保険)」に加入していた場合
世帯主が勤め先で、「健康保険被扶養者(異動)届」を提出し、ご自身の勤め先で健康保険(社会保険)加入のための所定の手続きを行います。
まとめ:離婚時には民間保険、公的保険ともに見直し、手続きは必要
今回の記事では離婚時の保険の手続きや見直しのポイントを解説してきました。
離婚後に保険のことで後悔しないためには、離婚前からしっかり夫婦で相談することが大切です。
もし分からないことがあったら、ファイナンシャル・プランナーや保険会社に確認しましょう。