- 親や祖父母が介護になった時、医療保険と介護保険どちらを使うべきかわからない方
- 公的な制度の概要を知ることで無駄な保険をかけずに、効率的に医療と介護に備えたい方
- 自身の老後に備えて、どんな保障を準備しておけばいいかを早めに把握しておきたい方
- 公的保険制度の概要を知らないと、いざという時に困ってしまうかも…民間保険の必要性についても合わせて解説
- 公的医療保険と公的介護保険、実は併用出来ないって知っていますか!?
- 大介護時代に備えて知っておきたい!訪問介護や訪問リハビリで優先される保険は〇〇。
こんにちは!ファイナンシャル・プランナーの伊達有希子です。
よく耳にする医療保険と介護保険。その違いをご存じですか?
本記事では保険のプロ(保険募集人)への研修講師も務める筆者が、医療保険と介護保険の違いをわかりやすく解説します。
2つの違いを押さえておくことで、いざという時に困らずスムーズに対応できますよ。
まずはじめに、医療保険の基本から一緒に確認していきましょう。
国内金融機関を経て 2013 年に独立系 FP 事務所を設立し現職。
有料でのライフプラン作成や資産運用の提案などの FP 業務のみならず、マイナビウーマンなど情報メディアへの執筆活動、セミナー講師などの活動も数多く行っている。
親しみやすくわかりやすい資産形成の伝え方が、一般消費者より大変好評を得ており、30~40 代世帯を中心とした多くの FP 顧問契約も保有。
医療保険とは
医療保険と介護保険には、それぞれ国が運営する【公的保険】と、民間の保険会社が運営する【民間保険】の2種類があります。
細かい部分は本文に後述しますが、まずは全体像を把握しておくと制度の違いがわかりやすくなりますよ。
医療保険 | 公的医療保険(国民全員が加入) | 民間保険(任意加入) |
介護保険 | 公的介護保険(40歳以上の国民全員が加入) | 民間保険(任意加入) |
続いて、医療保険と介護保険それぞれの基礎知識をお伝えしていきます。基礎の部分を知ることで、「どんな時にどの保険をつかえばいいのか?」の判断がしやすくなりますので、早速みていきましょう。
公的医療保険の解説
健康保険や国民健康保険のことですね。以下で主な制度をご紹介していきます。
医療費の一部負担(自己負担)割合について
窓口で支払う自己負担額が「診察にかかった医療費の1~3割」になるのは、公的医療保険制度の給付によるものです。医療機関を自由に選べるフリーアクセスという制度が特徴です。
安い医療費で高度な医療が受けられる、日本ならではの制度ですね。
高額療養費制度について
家計に対する医療費の自己負担が過重なものとならないように、医療機関の窓口において医療費の自己負担を支払った後、加入している健康保険から事後的に給付が受けられる制度です。
入院や手術をするときに「月をまたがない方がいい」というのは、この高額療養費制度の計算上、ひと月にまとめた方が負担が減るからなんですね。
健康保険の付加給付について
付加給付制度のある健康保険に加入している場合、高額療養費制度に上乗せして医療費を払い戻ししてくれる制度もあります。その自己負担額は月2万円~2万5,000円程度になることも。
毎月の医療費の負担がこんなに軽くなるのは嬉しいですよね。
「健康保険名称+付加給付」と検索してみると、自分の加入している健康保険に付加給付の制度があるかどうかをすぐに調べることができます。
加入している健康保険の制度に付加給付があるかどうか、ぜひ確認してみてくださいね。
これ以上は長くなるので割愛しますが、もっと詳しく知りたい方は厚生労働省の「我が国の医療保険について」のリンクをご覧ください。
厚生労働省「我が国の医療保険について 」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/iryouhoken01/index.html
民間医療保険の解説
具体的には自由診療・先進医療・差額ベッド代・入院時の食事代、通院費などを補填してくれます。
実際に病気になった時に、自分が納得できる環境で望む治療を受けるための出費をカバーしてくれる心強い存在ですね。
主な保障は入院給付金と手術給付金。それぞれの特徴を表にまとめてみました。
入院給付金 | ケガや病気による入院で給付。契約により支給額や入院限度額が異なる。 |
手術給付金 | ケガや病気で手術を受けた場合に給付。手術内容や入院の有無で給付額が異なる。 |
特に健康保険の付加給付の有無は大きなポイントとなりますので、一度確認してみてください。
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介護保険とは?
介護保険とは、名前の通り介護にかかる費用を補填する目的で加入します。
こちらも医療保険と同様に、公的介護保険と民間介護保険がありますので、整理しながらみていきましょう。
公的介護保険の解説
40歳以上の会社員の方は、お給料から天引きされる社会保険料欄で公的介護保険料を確認することができます。
公的介護保険は少子高齢化社会の日本を支えるために、2000年に新しく制定された制度です。
加入対象は次の2つに分けられています。
- 65歳以上の第一号被保険者
- 40歳以上65歳未満の第二号被保険者
公的介護給付を受ける対象となる人は、原則①「65歳以上の第一号被保険者」に該当した方で、要介護または要支援と認定された方になります。
②の場合は、要介護または要支援の状態が老化に起因する16種類の特定疾病である場合のみ対象になります。
参考:厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html
公的介護保険のサービス概要
公的介護保険からのサービスを受けるには「介護を要する状態にある=要介護認定」を受ける必要があります。
要介護認定を受けるには、申請から認定調査、審査会という流れを経るので、1カ月~2カ月程かかります。
なるべく早めに市区町村(東京都であれば区)の介護保険窓口に連絡しましょう。地域包括支援センターに頼めば、申請を代行してもらうこともできます。
▼在宅サービス
- 自宅で受けるサービス
- 訪問介護・訪問看護・訪問リハビリテーションなど
- 施設などを利用して受けるサービス
- デイサービス・通所リハビリテーションなど
- 介護の環境を整えるサービス
- 福祉用品の貸与・ケアマネジャーによるケアプランの作成など
▼施設サービス
- 施設に入所して受けるサービス
- 特別養護老人ホーム・介護老人保健施設・介護医療院などへの入所
在宅サービスと施設サービスを同時に受けることはできず、どちらか一方を選ぶことになりますのでご注意ください。
今回の記事は公的保険サービスの概要のみ記載しておりますので、詳細は市区町村(東京都の場合は区)の公的介護保険制度の窓口で確認してみてください。
民間介護保険の解説
具体的には、通院費や家事代行サービスの利用、消耗品費などを補填してくれます。
限度額以上のサービスを受けたいときは、全額自己負担となってしまいます。
まずは公的介護保険制度でどのくらいの給付が出るのかを確認した上で、足りない部分を民間保険でカバーする方法がオススメです。
民間の介護保険は次の給付がメインです。
介護一時金 | まとまったお金が給付される |
介護年金 | 毎年定期的な年金として給付される |
一時金と年金を組み合わせた保障もありますので「もし介護になったらどうするか?」をイメージしながら保障内容を組み立てていくと良いでしょう。
自分はもちろん、周りの家族も介護保険に加入していると経済的な心配が減ることは間違いないですね。
訪問介護や訪問リハビリで優先される保険は?
ポイントは「要介護(要支援)の認定をうけているかどうか。
要介護(要支援)を受けている場合は、基本的には公的介護保険が優先されます。
疾病によっては公的医療保険が適用となる場合もありますが、自身での判断は難しいケースもあるので市区町村の窓口へ問い合わせてみるのが安心でしょう。
訪問介護 | 看護師によるサポートを自宅でうけること | 要介護(要支援)認定の場合は介護保険の対象※例外あり |
訪問リハビリ | 理学療法士や作業療法士などリハビリの専門家のサポートを自宅でうけること | 要介護(要支援)認定の場合は介護保険の対象 |
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医療保険と介護保険の併用はできるのか?
ただし訪問介護の場合、要介護(要支援)認定の場合であっても厚生労働大臣が定める特定の疾病(末期の悪性腫瘍、多発性硬化症など)に該当する場合は、介護保険と医療保険が併用できる場合があります。
まとめ
日本人であれば、全ての人が公的医療保険制度に加入し、40歳からは公的介護保険制度に加入義務があります。そのため必要最低限の保障は公的保険制度で守られていることになり、必要以上に不安に思う必要はありません。
国の方針として、症状が安定しているお年寄りには比較的安価な公的介護保険を利用してもらい、公的介護保険の適用外であるときは公的医療保険を使う、という流れが基本と覚えておくとわかりやすいでしょう。
ただし、末期のがんのような難病で、回復が望めないが在宅で看取りたいというケースも増えていて、この様な場合は公的介護保険と公的医療保険を併用することも可能です。
また公的制度だけでカバーできない費用もあるので、必要な方は任意の民間保険を利用することでより安心して暮らしていくことが出来るでしょう。人生100年時代、老後や介護をイメージして元気なうちに必要な保障を準備していけば安心です。
本記事で公的保険制度と民間保険の組み合わせはある程度ご理解いただけたと思いますが、ベストな組み合わせを知りたい方はファイナンシャル・プランナーにご相談いただくのが近道です。迷っていてなかなか結論が出ないという方こそ、是非お気軽にご相談ください。