保険金の受け取り準備は大丈夫?親の生命保険を確認できる制度をご紹介

お父様やお母様の生命保険に関して、加入状況を把握していらっしゃいますか? 

いざという時に頼りになる生命保険ですが、もし契約状況がわからなければ保険金が受け取れなかったり、受け取りが遅れてしまう可能性があります。

本記事では、いざという時に契約者・被保険者本人に代わって生命保険の契約有無を確認できる生命保険契約照会制度についてご説明します。

この記事を書いた人
ファイナンシャル・プランナー
横田 健一(よこた けんいち)

CFP認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP学会会員日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)。

大手証券会社を経験後、2018年1月に独立。

「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで情報サイト「資産形成ハンドブック」やYouTubeで情報発信しながら、家計相談やライフプラン・シミュレーションを行い、個人の資産形成をサポートしている。

目次

いざという時、親の生命保険を確認するにはどんな方法がある? 

日頃から親子でコミュニケーションを取っていたとしても、お金についての正確な情報まではなかなか掴みきれていない方が多いのではないでしょうか。

横田 健一

預貯金など通帳によって確認しやすいものもありますが、生命保険の契約状況については把握するのが難しいのが実情。

特に生命保険については、死亡時はもちろん、認知症と診断された時に保険金が支払われるタイプの契約もありますから、周囲の人が加入状況を把握しておくのがより一層重要になってきます。

そこで、まずは親がどんな保険に入っているかを確認しましょう。

方法としては、まず保険証券を探して確認することです。また、保険会社から送られてくる「ご契約内容のお知らせ」「生命保険料控除証明書」などの定期的に送付されている通知物を見つけることでも確認できます。

これらの書類を探しても見つからない場合は、預金通帳で保険料の口座振替履歴がないか確認してみましょう。

また、保険会社からもらったグッズ(カレンダー、クリアファイル、ボールペンなど)があれば、それを手がかりとして確認できる可能性もあります。

このように、ある程度は確認することができるものの、こういった方法ではすべての契約を網羅できるとは限りません。

横田 健一

そのような場合に利用を検討したいのが、2021年7月から開始された「生命保険契約照会制度」です。

次で詳しくてみていきましょう。

生命保険契約の有無を一括で確認できる生命保険契約照会制度とは?

この新しい制度では、災害とは関係なく、契約者や被保険者が死亡した場合や、認知判断能力が低下している場合であっても、法定相続人や親族などから生命保険契約の有無を調べることが可能な制度となっています。

生命保険契約の有無を調べることができる制度としては、東日本大震災の発生以降、これまでは被災した場合など生命保険契約の手がかりを失った場合に限定して「災害地域生命保険契約照会制度」が生命保険協会によって提供されてきました。

それが、2021年7月に、災害時に加えて平時でも利用することができる「生命保険契約照会制度」として一本化され、利用しやすくなったのです。

実際に利用するときの流れは次の図のようになっています。

照会の申請から調査結果の回答までの流れ(生保協会資料より)

まず、ご家族に死亡した方もしくは認知判断能力が低下した方(照会対象者)がいて、その方の生命保険契約の有無について手がかりがなく困っている方(照会者)が生命保険協会の専用ウェブサイトから申し込みます。

申し込み、利用料金の支払いが確認されると、生命保険協会が各生命保険会社(全42社、日本で営業するすべての生命保険会社)に一括で照会対象者の生命保険契約の有無を確認、2週間程度で結果をとりまとめて照会者に回答してくれます。

つまり、この制度を利用すると、生命保険協会の会員となっている全42社についての契約の有無について、一度に確認することができるというかなり便利な制度です。

ただし、生命保険協会からの回答内容は、原則として生命保険各社との契約の有無のみとなっていますので、具体的な契約内容の確認や保険金・給付金の請求については各生命保険会社にご自身で行っていく必要があります。

また、平時においては利用料3,000円(税込)を支払う必要があること、そして死亡診断書や法定相続情報など、状況に応じて様々な必要書類を準備する必要も。

なお、財形保険契約及び財形年金保険契約、支払いが開始した年金保険契約、保険金等が据え置きとなっている保険契約については照会の対象になりませんのでご注意ください。

生命保険契約照会制度が利用できる3つの状況と利用方法

生命保険契約照会制度は、平時(死亡時)、平時(認知判断能力低下時)、災害時と3つの状況で利用することが可能です。

なお、ここで照会対象者は、対象契約の契約者・被保険者(死亡した方や認知判断能力が低下した方)で、照会者が照会対象者のご家族となります。

平時の場合に照会できるのは、照会対象者の法定相続人や遺言執行人、3親等以内の親族等となっています。具体的には生命保険協会のウェブサイトから申し込み、ウェブサイトもしくは郵送での受付、回答となります。

必要となる書類は、照会者の本人確認書類、法定相続情報、死亡診断書(死亡時)、生命保険協会所定の診断書(認知判断能力低下時)等となっています。

生命保険契約照会制度の概要(平時。生保協会資料より、ウェルスペント作成)

一方、災害時に紹介できるのは、照会対象者の配偶者、親、子、兄弟姉妹およびそれらの代理人となっています。この場合、受付方法は電話のみで回答は郵送、制度の利用料は不要です。

この場合は災害時ということで書類は必要なく、電話で、照会対象者の電話番号、照会者の避難場所、照会結果の連絡方法などを伝えるだけで申込みが可能です。

生命保険契約照会制度の概要(災害時。生保協会資料より、ウェルスペント作成)

いざという時に備えて、日頃から取り組んでおくべき大切なこと

人生を終えるにあたり、まわりの人に迷惑をかけないよう準備しておく「終活」が注目され広がりつつあります。終活することはもちろん大切ですが、災害や交通事故といった不慮の事故により、ある日突然人生の終わりを迎えてしまうこともありえます。

横田 健一

そうした事態に備えるためには、年齢によらず、日頃から金融機関の口座、生命保険契約、不動産などについての情報を整理し、財産目録などの形でまとめておくことが大切です。

そして、配偶者はもちろん、子どもたちともそういった情報について日頃から共有しておくことで、遺されたご家族にかかる負担を軽減することが可能です。

生命保険契約照会制度は便利な制度ですから、必要な時は利用することをおすすめします。ただし、このような制度を利用しなくてもご家族が確認できるようにしておくことが最も大切かと思います。

〈参考資料〉
実際に利用される場合など、詳しくは以下のページでご確認ください。

  • 生命保険契約照会制度のご案内(一般社団法人 生命保険協会)
  • 一般社団法人 生命保険協会「「生命保険契約照会制度」について」

執筆:2021年12月

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この記事を書いた人

横田 健一 (よこた けんいち)のアバター 横田 健一 (よこた けんいち) ファイナンシャル・プランナー、株式会社ウェルスペント代表取締役

CFP認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本FP学会会員日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)、住宅ローンアドバイザー、日本年金学会会員

大手証券会社にてデリバティブ商品の開発やトレーディング、フィンテックの企画・調査などを経験後、2018年1月に独立。「フツーの人にフツーの資産形成を!」というコンセプトで情報サイト「資産形成ハンドブック」やYouTubeで情報発信しながら、家計相談やライフプラン・シミュレーションを行い、個人の資産形成をサポートしている。東京大学理学部物理学科卒業。同大学院修士課程修了。マンチェスター・ビジネススクール経営学修士(MBA)

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