人生100年時代と言われる中、長期的なライフプラン、マネープランを作成し、資産形成を始める人が増えています。
このような時代において、資産形成では長期・積立・分散投資が王道だと言われていますが、きちんと理解されている方は意外と少ないかもしれません。
これを理解しておくだけで、投資で失敗するリスクを軽減できます。
本記事では、つみたてNISAやiDeCo(個人型確定拠出年金)などを活用した資産形成において、非常に重要な考え方である長期・積立・分散投資についてご説明します。
投資と投機
一般的に投資と投機というのは混同されやすく、明確に区別されていないかもしれませんが、筆者は投資と投機について次のように考えています。
まず投資についてですが、
です。
一方、投機は
です。
資産形成で大切なことは投機ではなく投資をしていくこと
次の図をご覧ください。
ある投資対象となる資産について考えてみましょう。
その資産が世の中に付加価値を生み出しているのであれば、その資産を持っている人の資産価値は時間とともに増大していきます。
今日、明日といった短期間で急激に増えることはありませんが、5年、10年、20年と時間をかければ生み出された価値が積み上がっていくはずです。
長期的には上がっていくことが期待されますが、時には大きく下がることも、大きく上がることもあるのです。
投資においては途中で価格の変動があったとしても、価値が増大していくと期待できることが大切なのです。
続いて、次のグラフのような別の資産を考えてみたいと思います。
こちらは世の中に付加価値を生む資産ではありませんので、価値は一定です。しかし、価格は日々変動しますので、上がることもあれば下がることもあります。
このような資産価格の変動を見ながら、買ったり、売ったりといった取引を繰り返すことで儲けることも可能かもしれません。
しかし、こういった行為は投機的な行為だと考えています。
資産形成においては、価値を生み出し続ける資産を対象として長期的な投資をしていくことが大切なのです。
株式、債券、不動産、金、暗号資産のうちで投資に適した資産は?
投資対象の資産として、みなさんはどのような資産を思い浮かべますでしょうか。
ここでは一般的によく取り上げられる次の5つの資産について、価値を生み出すかどうかという視点から考えていきたいと思います。
- 株式
- 債券
- 不動産
- 金(ゴールド)などの貴金属
- 暗号資産
まず株式です。株式を発行している株式会社は、世の中に商品やサービスを提供することで売上として対価を受け取り、必要な費用を支払った上で利益を生み出します。
この利益は基本的に株主のものとなり、株主は配当を受け取り、利益が成長することで結果的に株式の価格、つまり株価の上昇という形で投資家としてのリターンを獲得します。
このことから株式は価値を生み出す資産と言えるでしょう。
次に債券です。債券は借用書のようなものですから、債券の発行者(一般的に発行体と呼ばれます)は、債券の投資家に対して利息(クーポン)を支払い、借入期間終了時(満期)には元本を全額返済します。
続いて不動産はどうでしょうか。不動産を保有している人は、入居者に貸し出し、家賃収入を得ます。つまり、不動産は家賃収入という付加価値を生み続ける資産と言えます。
次に、金などの貴金属について考えてみましょう。金の塊1kgを保有し続けたら、20年後には3kgに増えるでしょうか?
そんなことはありませんね。貴金属それ自体は特に付加価値を生み出す資産とは言えなさそうです。
最後にビットコインなどの暗号資産について考えてみましょう。
こちらも、金などの貴金属同様、暗号資産を保有しているだけでは、何かしらの価値を生んでくれるわけではありません。
価格は変動しますので、うまく売買すれば儲かるかもしれませんが、それは投資というより、投機になるのではないでしょうか。
このように、資産形成においては投資する資産が投資に適した資産かどうかをしっかり確認し、選んでいくことがとても大切なのです。
ただし、価値を生み出す資産に投資すれば誰でも簡単に資産を増やしていけるか、というと必ずしもそうではありません。
長期・積立・分散投資の基本①:長期投資とは?
まず長期であることの重要性について考えてみたいと思います。
すでにご説明していますが、株式、債券、不動産などの価値を生み出す資産について、生み出される価値は一般的に時間に比例しますので、長くなればなるほど生み出される価値は大きくなります。
例えば、不動産の場合、1ヶ月であれば1ヶ月分の家賃しか入ってきませんが、10年間であれば10年分の家賃が入ります。
もちろん期間が長くなれば途中で空室になってしまうリスクも高まりますが、家賃として受け取れる合計金額は期間が長くなるほど、大きくなることが期待できます。
実際、金融庁の投資信託による積立投資データでは、次のグラフのように、保有期間が5年間の場合には元本割れしてしまうことも一定程度ありますが、保有期間が20年の場合には元本割れしなかったことが示されています。
20年なら絶対大丈夫ということでもありませんが、ある程度長期での投資が大切になってくるのは間違いありません。
長期・積立・分散投資の基本②:積立投資とは?
次に積立投資について考えてみましょう。
一般的には毎月2万円など、1ヶ月毎に積み立てていくことになります。積立投資と対照的なものは、まとまったお金を一度に投資する一括投資です。
資産形成において、どちらがよいのでしょうか。
資産形成においては、筆者は積立投資というスタイルが適していると考えています。
というのも、一般的に会社員や公務員の方であれば給与を受け取るのは月に1回だからです。その中から一部を自動的に積立投資にまわしていくというスタイルが、収入の周期と合致するため適しているのです。
また、若い方を中心に、それほどまとまったお金をまだ持っていないという方も多いのではないでしょうか。
そういった方にとっては、毎月1万円(一部のネット証券などでは毎月100円のところも)などの少額から始めることもできますので、無理なく資産形成を始めていくことが可能なのです。
一括投資の場合、たまたまそのタイミングが悪く、その後暴落してしまうこともあります。
しかし、毎月少しずつ投資を行っていくなら、長期的には買付価格が平均的な数字に落ち着いてきますので、安値で拾うこともできませんが、高値づかみしてしまうこともないのです。
資産形成においてはホームランを狙いにいく必要はありません。コツコツと長期にわたりヒットを積み上げていくことが大切なのです。
長期・積立・分散投資の基本③:分散投資とは?
最後に分散投資です。
分散投資の反対概念は集中投資です。例えば株式であれば、特定の1銘柄のみに全資金を投資していく、不動産であれば特定の物件1つだけに投資するのが集中投資です。
もちろんその唯一の投資対象がものすごく儲かればよいのですが、そのような投資は非常にリスクの高い投資となります。
投資した企業が倒産してしまったら、投資した物件(不動産)に直撃する地震が発生したら、など非常にリスクの高い投資となります。
そういった事態を避けるため、できるだけ多くの資産に幅広く分散して投資していくことが大切です。
株式で言えば、製造業のみではなく、サービス業、情報通信業など幅広い業界の企業に、そして地域の観点でも、日本企業のみならず海外の幅広い企業を対象に投資していくことが重要となります。
また、資産の種類という意味では、株式のみならず、債券や不動産も含めて幅広い資産に投資をしていくことによってリスクを低く抑えることが可能になります。
分散投資についての有名な投資格言に「卵を1つのかごに盛るな」というものがあります。
例えば、卵10個を1つのかごに盛った場合、そのかごを落としてしまったら10個すべての卵が割れてしまいます。
しかし、卵を1つずつ、10のかごに分けて持っていれば、そのうち1つ、2つのかごを落としてしまっても、残りの8つ、9つの卵は無事だというわけです。
資産形成の王道と言われる、長期・積立・分散投資を行っていけば、長期的には資産が増えていく可能性が高まります。
実際、次のグラフは2001年から2020年の20年間にわたり、毎月1万円の積立投資を行った場合の結果を示しています。
途中に上げ下げの波はありますが、13年を経過した頃からは安定的にプラスのリターンを継続していることが確認できるかと思います。
最後に
投資と聞くと、「リスクが高いのでは?」と思われる方も多いかと思います。
しかし、今回ご紹介した考え方をしっかりおさえ、長期・積立・分散投資という基本をしっかりと守りながら実行していけば、資産形成における投資は決して難しいものではありません。
人生100年時代、長期的な視点でのライフプランやマネープランの重要性が高まっています。マネーについては、預貯金のみではなく、投資という手法も上手に取り入れながら活用していただければと思います。
執筆:2022年1月