「がん(悪性新生物)」(以下、がん)は、日本人の2人に1人は一生のうちにかかると言われているメジャーな病気で、多額の治療費がかかります。
万一がんに罹患した時に備えて、がん保険に加入している人や、これからがん保険に加入しようと考えている人は少なくないかと思います。中には複数のがん保険に加入しようと考えている人もいるかと思います。
では複数のがん保険に加入する場合には、どのような点に留意すれば良いのでしょうか?
本記事では、金融機関で約10年間、保険の窓口販売を行なってきた筆者が、複数のがん保険加入について解説していきます。
宮城県出身。慶應義塾大学商学部卒。ファイナンシャル・プランニング技能士1級。
新卒で大和証券へ入社後、みずほ銀行など5社へ転職し、FPコンサルティング部部長や社長室室長などを経て独立。
金融機関の執筆記事の監修や、不動産会社でのセミナー講師、金融機関向けの動画制作など実績多数。金融初心者からは「難しいテーマでもわかりやすく理解できる」と好評。
がん保険の複数加入について
支払い基準に該当していれば、契約している複数の生命保険会社から、加入したがん保険分の給付金をそれぞれ受け取ることができます。
例えば、A社のがん保険(200万円の一時給付金)と、B社のがん保険(300万円の一時給付金)に、それぞれ加入していた場合には、最大で合計500万円の一時給付金を受け取ることができます。
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がん保険の複数加入は必要?
がん保険に複数加入できることは先述の通りですが、そもそも必要性はあるのでしょうか?
一口にがん保険といっても、保険会社によって保障内容や保障範囲が異なりますが、大きく2つのタイプに分けることができます。
- がんと診断された場合の一時金が充実した「一時金重視型」
- 手術や放射線治療・抗がん剤治療などの治療給付が充実した「治療給付充実型」
一時金重視型の場合、がんと診断されたら一定の給付金を受け取ることができますが、一時金で治療費全てをまかなえるとは限りません。
治療給付充実型の場合、がんの治療は種類や進行度合いに応じて人によって異なる点にご注意です。
例えば、抗がん剤治療の保障があるがん保険に加入していても、抗がん剤治療を受けなかった場合には給付金を受け取ることができません。
治療給付充実型の場合、給付金を受け取れるかどうかは治療内容次第であるため、一時金重視型と同様に給付金だけで治療費全てをまかなえない可能性があります。
つまり、一時金重視型でも治療給付充実型でも、がん治療の全ての支出に備えられるわけではありません。そのため、がん保険の複数加入の必要性はあると言えます。
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がん保険に複数加入するメリット・デメリット
次に、がん保険に複数加入するメリット・デメリットについて解説していきます。
複数加入するデメリット3選
はじめに複数加入するデメリットについて解説します。以下の3つのデメリットがあります。
- 毎月の保険料の総額が高くなる
- 無駄な保険料を支払ってしまう可能性がある
- 保険金請求に時間がかかる
順にみていきましょう。
【デメリット1】毎月の保険料の総額が高くなる
複数加入した場合、当然ですが契約する保険の数が増える分、毎月の保険料の総額が増えます。1つの会社で特約を付加した場合よりも、毎月の保険料の総額は高くなる場合もあります。
どれだけ保障が充実していても、保険料を払うのが難しくなって途中で解約してしまっては意味がありません。
【デメリット2】無駄な保険料を支払ってしまう可能性がある
がん保険は各社でそれぞれ特徴がありますが、主契約は似たような保障内容になっている場合が多いです。そのため重複している部分に2重で保険料を支払ってしまう可能性があります。
複数加入する際には、それぞれの会社の保障内容について重複がないかを確認するとともに、足りない部分を補えるような保障内容の組み合わせを考えることが大切です。
【デメリット3】保険金請求に時間がかかる
また、診断書が必要な場合には一般的に費用も倍かかってしまいます。診断書の金額は病院によって異なりますが、1通3,000円〜1万円程度です。
2商品に加入した場合には、保険金の請求手続きは2社分、診断書の発行時の手数料も一般的に2倍かかるという点はデメリットであると言えます。
複数加入するメリット3選
次に複数加入するメリットについて解説します。以下の3つのメリットがあります。
- それぞれのがん保険の保障同士の弱みを補完し合うことができる
- 保険金を充実させることができる
- 保険会社の破綻リスクを軽減できる
【メリット1】それぞれのがん保険の保障同士の弱みを補完し合うことができる
異なる保障内容のがん保険に複数の会社で加入することで、ひとつの保険会社だけでがん保険に加入するよりも保障を充実させることができます。
例えば、A社では通院の保障が充実していて、B社では入院の保障が充実しているとします。
【メリット2】保険金を充実させることができる
まずは単純に2社から保険金を受け取れるので、給付金の総額が大きくなります。
また、給付金の支払いには上限が設けられていることもありますが、受け取れる給付金が分散でき、ひとつの会社で加入したときよりも多くの給付金を受け取ることも可能です。
【メリット3】保険会社の破綻リスクを軽減できる
万が一、保険会社が破綻してしまった場合には、保障が受けられなくなることや、契約時通りの内容で支払われないことがあります。
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複数加入するメリットが大きい人、小さい人
続いてがん保険を複数加入するメリットが大きい人、小さい人についてです。
メリットが小さい人は無理に複数加入する必要はありませんが、メリットが大きい人は複数加入を検討する価値は十分あると思います。
メリットが小さい人
- 治療費を支払っても生活費等に支障がない位の十分な貯蓄や資産がある人
- 勤務先の福利厚生が充実している人
- がんの保障が付加されている、住宅ローンの「がん団信」「11疾病団信」に加入している人
メリットが大きい人
- 貯蓄があまりなく、治療費を支払うと生活に影響が出るような人
- 老後資金等の目的のために貯蓄しているお金を取り崩したくない人
- 保障が手薄になりがちな自営業者
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がん保険の複数加入を検討するときのポイント・注意点など
ここからは、がん保険の複数加入を検討するときのポイントや注意点をご紹介します。
1. 保険料が割安なネット保険も視野に入れる
対面販売の主な特徴
- ラインナップが豊富である一方、給付金の支払条件が複雑な商品もある
- 担当者がいてサポートや質問の対応をしてくれる
- 保険料は高め
ネット保険の主な特徴
- 掛け捨て型の保険が中心のシンプルなラインナップ
- 担当者はいなく、不明点はコールセンターに質問する
- 保険料は割安
このように対面販売とネット保険では、それぞれメリット・デメリットがあります。
最近はネット保険が人気ですが、担当者がいた方が安心という人は対面販売の方が良い場合もあります。
そのため複数加入をする場合には、「対面販売+ネット保険」「ネット保険+ネット保険」の組み合わせをおすすめします。
ネット保険については、上場企業であるライフネット生命グループが運営する betterChoice などで、複数の保険をまとめて比較・検討できます。
比較の際は、お金のプロによって厳選されたネット保険が掲載されているサイトが安心ですね。
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2. 保障内容が重複していないか確認する
複数加入するデメリットでご紹介したように、基本的にがん保険の主契約の保障内容は、どこの生命保険会社でも大きく変わらないため同様な保障の可能性があります。この場合、複数のがん保険に加入するメリットが減ってしまいます。
そのため、がん保険に複数加入する場合は、がん保険それぞれの保障内容が重複していないか確認して加入することが大切です。
まとめ:がん保険の複数加入を検討しても良い人もいる
今回は、複数のがん保険加入についての必要性やメリット・デメリット、検討する時のポイントなどをご紹介してきました。
十分な資産がある人は、がん保険の複数加入はしなくても問題ないかと思います。一方で貯蓄が十分になく、治療費を支払った場合の生活費に不安を感じる人は、がん保険の複数加入を検討した方が良いかもしれません。
一度ご家族でがん保険の複数加入について話し合ってみてはいかがでしょうか。